心的外傷(2)

記事の要点

  • トラウマ体験による心への影響は
    PTSDとして診断されることがある
  • PTSDには主に
    「再体験」「回避・麻痺」「覚醒亢進」の
    3つの特徴がある
  • 再体験:過去の出来事が
    今ここで起きているかのように
    生々しくよみがえる
  • 回避・麻痺:心がすでに崩れかけた状態で、
    感情や思考を閉ざして存在を保とうとする反応
  • 覚醒亢進:身体・心が常に緊張状態にあり、
    わずかな刺激にも過敏に反応する
  • これらの症状は苦痛を伴うが、
    これらの症状により心を守っているともいえる

トラウマ的な出来事による
心への否定的影響は、
精神医学的には
PTSDという診断名でとらえられます。
PTSDの診断では、
主に次の3つの特徴が挙げられます。

  1. 再体験
    トラウマ的な出来事が、
    心の中に繰り返し生々しく再侵入してきます。
    それは自分の意思や時間の流れとは無関係で、
    過去の出来事が
    あたかも“今ここで起きている”かのように
    感じられる体験です。
    心は出来事を意味づけたり
    理解することができず、
    過去と現在の境界が曖昧になった状態で、
    ただ経験が再現され続けます。
  2. 回避・麻痺
    圧倒的な体験の再侵入を受けた心は、
    感情や思考を閉ざそうとします。
    例えば、
    関連する話題や状況を避けようとする、
    などです。
    これは単なる「回避」や「防衛」ではなく、
    崩れかけた内的世界の中で、
    心が何とか存在を保とうとする最小限のあり方です。
    感情を感じないようにしたり、心を沈黙させることは、
    すでに解体に近い状態にある心が、
    これ以上壊れないようにする試みともいえます。
  3. 覚醒亢進
    世界が再び襲いかかるかもしれない
    という確信のもと、
    身体と心は常に緊張状態にあります。
    わずかな刺激にも過敏に反応し、
    不眠や過覚醒が続区、などの状態です。

これらの3つの特徴(症状)が
ある一定期間以上続いていると、
PTSDの診断基準を満たすことになります。

これらの症状は、どれも苦痛を伴います。
しかし同時にそれは、
崩壊しかけた心が、
なんとか生き延びようとしている痕跡でもあります。

トラウマという苦痛な体験から
心を守るために
これらの症状が出ている、
つまり
これらの症状によって
心を守っている
ともとらえることができます。
(つづく)

この記事を書いた人

福嶋裕子 臨床心理士・公認心理師(高円寺心理相談室アオイトリ)