心的外傷(3)

記事の要点

  • 心的外傷は戦争体験だけでなく、
    児童虐待、性被害、家庭内暴力などでも生じる
  • ジュディス・ハーマンは、
    個別の被害による外傷も
    戦争などのトラウマと本質的に同じと考えた
  • 一度きりのトラウマと
    長期にわたるトラウマでは
    影響の現れ方が異なる
  • 長期トラウマは
    従来のPTSD診断だけでは
    説明が不十分な場合がある
  • ハーマンはこれを包括する概念として
    「複雑性PTSD」を提案した

心的外傷は、
これまで主に戦争体験によって生じる心身の障害として
理解されてきました。
しかし、心的外傷は戦争だけでなく、
児童虐待、女性への性被害、家庭内暴力など、
日常生活での深刻な被害によっても
生じることが明らかになっています。

ジュディス・ハーマンは、
性暴力やDVなどによる心的外傷の状態は、
戦争などの大規模なトラウマで見られる心的反応と
本質的に同じだと考えました。

ただし、一度きりのトラウマと、
長期間にわたるトラウマ曝露では、
心身への影響の現れ方が異なります。
長期にわたるトラウマは、
心に深く持続的な影響を及ぼすため、
従来のPTSDの診断だけでは
十分に説明できない場合があります。

そこでハーマンは、
長期間にわたるトラウマによる
心的外傷全体を包括する診断概念として、
「複雑性PTSD」を提案しました。
(つづく)

この記事を書いた人

福嶋裕子 臨床心理士・公認心理師(高円寺心理相談室アオイトリ)